手ぶらで行けるサポート付き貸し農園【シェア畑】

keisy12455’s blog

農業で独立を目指すアラサーのブログ

意外と知らない農薬の誤解

 

 日本の農業は農薬を多用し、生態系を破壊している!

発ガン性のある農薬を大量に投入した作物を食べさせられている!

だから、農薬を使用していない有機農業が素晴らしい!

 

とよく見聞きしますが、ホントにそうなのか?

 

そんな疑問をもったあなた

 

ここでは農薬とはどのようなものかが分かるよう、ご紹介する

 

農薬の歴史と役割 

科学技術の進歩前

 

農薬という概念は紀元前からあり、ローマやギリシャで使われ始めた

 

植物を煮出した汁やワインに種子を浸漬し種をまいていた

 

ユリ科バイケイソウを利用したり、マメ科のデリスの根の汁など、植物が持つ防除反応等をよく観察して利用していた

 

 日本では江戸時代にクジラの油を田んぼに張り、ウンカという害虫を油に落として退治していたのが始まりとされている

 

1732年の享保の飢饉はウンカの大量発生が原因だ

 

 

19世紀になると除虫菊の枯れた花の周辺で虫が死んでいるのを発見

 

1924年は、科学技術が躍進し、スイスで除虫菊の成分であるピレトリンが発見される

 

ピレトリンの構造を一部改良し現在のピレスロイド系の誕生が1945年だ

 

 その後も自然界からヒントを得て殺虫剤のDDTなど、農薬の開発が盛んにおこなわれた

 

太平洋戦争後

 

日本では戦後から広まった

 

終戦後中国や朝鮮半島から帰国した方にノミやシラミを退治するためにDDTが使われた

 

戦後食料難を乗り切るために農業でもDDTが使われた

 

1949年には殺虫剤BHC、1950年には除草剤2,4-Dが発売された

 

このころは環境や人体への影響よりも餓死させないことが優先事項であった

 

ベトナム戦争

 

しかし、そんな農薬はベトナム戦争で使われてしまった

 

アメリカ軍が苦戦していたゲリラ部隊を撃退しやすくするため、強力な枯葉剤をしようした

  

 戦後になりベトナム市民やアメリカ軍のベトナム帰還兵の間で、枯葉剤への接触を原因とする健康被害や出産異常が発生した。

 

また、レイチェルカーソン著書の「沈黙の春」が1962年に発売され、世間で化学合成された農薬の危険性への意識が一気に増大する

 

 

技術革新による変化

 

ベトナム戦争時に使用された枯葉剤のような人体に大変有害な農薬はあった

 

それを応用した農薬も同じくらい危険だ!なんて事は今はない

 

ベトナム戦争で人体への影響が大きすぎたので、影響は少ないが効果が高い農薬の開発が盛んになった

 

そのため現在では人体への影響が少ないものがほとんどだ

 

少ない量で同じ効果がだせるようになった

 

むしろ、いままでの機械でも使えるようにカサ増ししているくらいだ

 

分解が早く残留性が少ないもの、特定の病害虫にだけ効くものもある

 

また、自然界での食中毒などの病原が次々と発見され、それらから人を守るために農薬の開発も行われた

 

環境への低減と安全性が優先されてきてた

 

 安全性

では今は全く気にしなくてよいのか?

 

0か100かの話ではない

 

どんなものにもリスクがつきもので、食塩や砂糖も取りすぎたら毒になるし、取らな過ぎたら生命の危険だ

 

ほどよく付き合っていくのが良い

 

仏教用語で中道というところだ

 

では実際どんなリスクがあるのだろうか

 

ADI(許容1日摂取量)

 

農薬を新たに登録する際は動物実験を行い毒性を検証している 

 

マウスにいくつものパターン(短期的、長期的、経口、接触、吸引)で倍率を変えて農薬を与える

 

半分のマウスに異変があるか死亡する量を検証する

 

その量を超えない検証量を1/100倍し、それをADI(許容1日摂取量)とし、基準にしている場合が多い

 

ADI(許容1日摂取量)とは、毎日その量を摂取しても、健康に影響がないと推定される量だ

 

しかしこれは1つの農薬限定の話

 

日常たくさんの種類の野菜を食べるので、ADIを基準に各食品に残留農薬基準を振り分ける

 

そうしてトータルでその農薬のADIを超えないようにしている

 

では実際残留農薬から野菜をどれくらい食べたらADIに到達するのか

 

厚生労働省の調査を参照にすると

食品中の残留農薬等 |厚生労働省

 

平成29年の調査では、平均一日摂取量(µg/人/日)の対 ADI 比(%)は 0.000%~0.907% の範囲であった。

 

つまり今の1000倍食べ続けても体に異変が出る確率は半分以下である

 

だが、これは事故がない場合の話

 

実際にはどんなリスクがあるのだろうか

 

使用間違い

 

一番不安なのは、新しい農薬が出ることで農家の使用間違いが起こることだ

 

農薬の使用方法は作物別、作型や時期、対象害虫、散布方法、散布量などにより使用する農薬と希釈倍率が変わる

 

例えば、欄を一つ読み間違えると2000倍の希釈が500倍の希釈になってしまう

 

参照にバイスロイド乳剤のラベルを添付する

バイスロイド®乳剤|製品情報|バイエル クロップサイエンス

 

 てんさいの欄を見てほしい

 

同じ作物同じ害虫だが、10aあたりの散布量により希釈倍率が異なる

 

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読む欄を間違えて使用してしまう可能性がある

 

また希釈計算を間違えてしまうかもしれない

 

計量容器を間違うかもしれない

 

また違う作物に同じ害虫が発生したら使用してしまうかもしれない

 

これらの方が事故につながりやすい

 

 

 

検査監督方法

 

そのような事故を出さないように残留農薬の検査をしている

 

保健所や民間団体が不定期で抜き取り検査を行い、基準を超えた場合は回収し指導と検査頻度を上げる

 

これで農家にも緊張感を持たせている

 

農協に卸している農家では、農協から農薬を指定され、使用方法も指導されるので、このようなことはめったに起こらない

 

問題なのは道の駅等で販売されている少量のものは検査される頻度が少なく

 

農薬の知識を持たず、独自に農薬を買って使用した場合はリスクが高いといえる 

 

 

 

 

農薬の被害者になりうる場合

 

では農薬被害が起こるとしたらどのような場合か

 

それは農薬を使用している農家、もしくはすぐ隣の家だ 

 

1952年群馬県で殺虫剤パラチオンの摂取による死亡事故が起こってしまった

 

19歳の女性がパラチオンの容器を拾い上げて、手洗いせずに口の中に指を入れてしまったため起きた事件

 

パラチオンに限らず、このころは毒性が低くないので、少量でも命取りになってしまった

 

 

また農場のすぐ隣に家がある場合は気を付けたい

 

農家もそこはすごく気を付けているので、風の強い日や時間は農薬散布しない

(まぁ、散布しても流れて効果が薄くなるという理由もあるが)

  

なので、通常生活で特に都心は農薬を気にすることは無くてよい

 

 

海外との比較

 

そうは言っても海外と比較すると、日本の農薬使用量は異常だ!

 

たしかに面積当たりの使用量は海外と比較すると多い

 

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農薬使用量 面積当たり国別年別

参照 FAOSTAT(縦軸はKg/ha)

 


 これは面積あたりに多くの農薬を使用していることを示す

 

なぜか

 

・日本は人口密度が高く農地が小さく、集約的に栽培しなければならないため

 

・四季があり、それぞれで病害虫が異なるため

 

・農薬を多く必要とする作物を育てているため

 

が考えられる

 

特にアメリカは遺伝子組み換え種子を使用しているので、農薬の量が少ない

 

植物自体に農薬成分を生み出すようコントロールしているし、少ない回数の除草剤で十分だからだ

 

つまり、もっと農地が増え、米、麦、大豆など比較的農薬の使用量が少ないものをたくさん食べ、多少おなかを壊しても騒がなければ、農薬の使用量は減るのだ

 

乱暴に言いすぎたが、農薬がなければ、今の食生活は維持できないのだ

 

 

実はこれも農薬

 とまあ、いろいろ書いたが、農家自体が農薬をあまり使いたくないので、現在はいろいろな農薬がある

 

自然の摂理を上手に利用した生物農薬

 

代表的なのはアブラムシを食べるテントウムシ

 

他にはハチやダニなど様々な害虫の天敵をハウス内に放ち害虫被害を低減する方法だ

 

しかし、これは生き物を利用するので、100%の効果は出ないし、餌である害虫がいなくなると死んでしまう

 

また害虫は成虫になっているが、天敵は幼虫など時期がずれると手遅れになってしまう

 

 でんぷんや油

 でんぷん糊や油(マシン油)を利用して、害虫を窒息させる農薬

 

こちらはたくさん頻繁に使用しないと効果があまりない

 

そしてその後洗い流さないと作物にでんぷんや油が付いたままになってしまう

 

しかし、使用者にも安全な農薬である

 

まとめ

農薬は安全だ

 

人の安全を守るために使用している

 

安心してよい

 

むしろ、怖い怖いと言いながら食事をすることのほうが、精神衛生上よくない

 

新鮮なものを水洗いして汚れを落として、バランス良く、笑顔で楽しく食事するほうがよっぽど重要だ

 

ではまた